口に甘いは腹に毒

 あ……謝らないと……。



「苹果ちゃん、そろそろ行こうか」



 玉露くんが立ち上がる。

 次の授業は選択科目で、教室を移動しなければならない。


 とはいえまだ時間に余裕はあるけど……。

 御鏡先輩から逃げようとするのは当然の行動とも言える。



「準備してね」



 お弁当を片付けてくれる玉露くん。

 戸惑ってたら、どんどん謝るタイミングが……は、早く言おう!



「あの先輩っ……すみ、」



 ──とん、人差し指が唇の動きを封じた。



「俺が味わえるのは苹果だけだからな」



 呆然とするわたしに机から抜き出した教科書を渡し、



「いってらっしゃい」



 するっと離れていった。

 ほんとに会いに来ただけだった……。

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