口に甘いは腹に毒




「じゃ、ここで時間潰しててね」

「うん。待ってるよ」



 放課後。委員会の集まりがある玉露くんと図書室の前で別れた。


 久しぶりに一人の時間を作れた気がして、ふうと息を吐く。

 御鏡先輩が現れてから、玉露くんの過保護は日に日に強さを増していく一方だった。


 御鏡先輩はというと、昼休みの度に教室へ顔を出して挨拶してくる。

 時々、色気のある声で心臓に悪い言葉を囁いてくるけど、玉露くんがわたしに用事を言い渡すとあっさり身を引くのだ。


 ──だから、わたしがちゃんと御鏡先輩に謝罪するには、二人きりになるしかないのである。



「……よし」



 玉露くんの姿が見えなくなったのを確認し、任務開始。

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