口に甘いは腹に毒


「ちょっ……ちょっと待ってください!」



 窓から顔を出して声を張り上げる。

 わたしに気付いて顔を上げたのは、御鏡先輩の使用人さん。



「今からそっちに行くので、止まっててほしいですっ!」



 そこからの全力ダッシュ。

 ぜぇはぁと息を切らしながら追い付いたわたしに、彼は小首を傾げる。



「白亜様。どうされましたか」

「あのっ……はぁ、あの、御鏡先輩は、」

「あちらの御車で待機していただいています」



 使用人さんの示す先、校門を出てから曲がり角の脇に車が止まっていた。



「お話されますか? 行きましょう」

「あ、わっ」



 なんて自然なエスコート。

 体が勝手に動いて、もう車までたどり着く。

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