口に甘いは腹に毒

 一息で言い切る。

 伝えたい気持ちが先行しすぎて早口になってるかも。それじゃ、自分が楽になりたいだけの謝罪と同じだ。

 なんでわたしはこうも、失礼なことばっかり……。



「顔上げろ、苹果」



 密かに落ち込むわたしの頭上へ、びっくりするほど優しい声色が降ってきた。

 ゆっくり上半身を元に戻すと同時、車の中に引き込まれてしまう。



「ひゃ、え、……!?」

「大丈夫、誘拐はしない。外で話しにくいことだったから、ここで聞いてくれ」



 あ、そうか……校門前は人通りが多いから。

 御鏡先輩がフォークだってわかるようなことは、公に隠した方が先輩のためだもんね。

 ぎゅっと握ってくる手のひらの温もりから、一時的に先輩を信用してみる。

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