口に甘いは腹に毒

 バクバクと心臓を鳴らしながら、もう白状するしか──と口を開いたところで。



「……ま、確かに、相手にしない方が賢いかも」

「へ……」



 納得した表情になって、玉露くんは前を向いた。



「あの人は見るからに敵に回すと怖い人だろうしね」



 ……よ、よかったあ~……!


 御鏡先輩が見た目ちょっと怖そうな人でよかった。

 玉露くんが穏便を好む人でよかった。

 唯一悪かった点は、わたしの嘘が下手なことだけだね。



「だ、だよね! わかんないけど、権力で学校にいられなくさせられたりしたら困るし!」

「……うん。そういうことにしよっか」

「え?」



 聞き取れなかったので、聞き返す。

 優しい玉露くんはもう一度言ってくれた。



「そういうこともあるよねって言ったんだよ」


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