口に甘いは腹に毒

 そりゃ、その方がありがたいけどっ……!

 びっくりしてる間に返事を完了させたようだった。



「デート、するか?」



 慌てるわたしに向かって爽やかに笑う御鏡先輩。

 ここまでしてくれるのって、恩を着せるためだけ……ではないよね、さすがに。



「まだ……保留で」

「ふは、わかった。気長に待つ」



 デートくらいなら……と考える自分もいたけど、ころころ意見が変わるのもなあと思って断った。



「そうだ。これはどうだ? 連絡先交換」



 御鏡先輩はスマホを掲げ、メッセージアプリの画面を見せてくる。

 デートと比べたら、ハードルはだいぶ下げてくれたかも。



「……いいですよ」



 ついに頷いてしまった。

 懐に入られてる予感がする。巧妙な罠によって。

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