口に甘いは腹に毒





 放課後は買い物して帰ろう、って意気込んだ。

 薬を飲んで落ち着いたらしい玉露くんにほしいものを聞いたら、『ない』ってメッセージが来ちゃったけど。

 病人に会いに手ぶらで行くのはないよね。


 号令の後、一目散に廊下へ飛び出す。



「うわあっ!」



 角を曲がった途端、比喩ではない大きな壁にぶつかった。

 反動で突き飛ばされそうなわたしを支えるのは、御鏡先輩だ。



「あ、すみませんっ!」

「苹果、急いでるなら車で送ってくが、どうする?」

「え!」

「玉露の様子、早く見たいんだろ?」



 どうやらそれを言いにきてくれたみたい。

 病人の玉露くんならまだしも、元気なわたしにまで力を貸してくれるというのか。

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