口に甘いは腹に毒

 車の後部座席にお邪魔した。

 乗りなれない他人の車に乗るときの緊張感ってなんなんだろう。粗相をやらかさないか怖いんだよね。

 カチコチに固まって背もたれにすら体を預けられないわたしを、御鏡先輩が笑う。



「苹果。もっとリラックスしろ」

「や……むり、です、ね」

「っはは、可愛いな」



 やばい……また、吊り橋効果。

 緊張でドキドキしてるところに甘い笑顔で攻撃されたら、勝手に顔が熱くなる。

 パッと顔を背け、外の景色を目で追った。



「りーんご。こっち向け」

「いや、です」



 わたしは玉露くんへ買っていくものを頭の中で整理するのに忙しいのだ。

 からかわれてどぎまぎしてる場合じゃない。

 絶対に振り向かないという鋼の心を感知したのか、御鏡先輩からの追撃は止んだ。

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