口に甘いは腹に毒
「ごめんっ、色々勝手だけど、わたし帰るね!」
「あー……後でご飯持っていこうか?」
「大丈夫! 食べ物くらいは家にあると思うから!」
朝ご飯用にストックしてあるパンとかシリアルとか!
とにかく、慌ただしく挨拶を済ませる。
「またね!」と残して、玄関で靴を履いていると……。
ガチャリ──扉が、開いてしまったのだった。
さいあく、だ……。
彼女はわたしと目線を交わらせた一秒後、見て見ぬふりをするかのようにさっと逸らす。
顔を青くし、口元を手で押さえながら。
「おじゃま、しまし、た……」
「……ええ」
カラカラになった喉から声を絞り出し、横を通り過ぎた。
冷たく扉が閉められる。