口に甘いは腹に毒
唯一、使用人の剣には伝えた。
俺が取り繕っていることを一瞬で見抜かれたからだ。
二人で原因を探り、やがて一つの結論へたどり着く。
治療法のない、原因不明の味覚障害。
通称フォーク。
病院に行っても処方される薬はケーキへの捕食欲を抑えるためのもの。
味覚は戻らないと思っていた方がいい、らしい。
しかし、本物のケーキの味を知ってから納得がいった。
舌の上でとろける甘美な味。
脳から全身へ、ビリビリと痺れるくらい巡っていく快楽。
幸福を失ってから初めて感じた刺激の正体を、あのとき思い出すことができたのだ。
今まで食べてきたどんなものより、強烈な、
──『美味しい』。