口に甘いは腹に毒





 家族のいない学校での昼食は、なるべく手短に済ませている。

 家が持たせてくれるお弁当をこっそり剣に任せ、ブロック型の栄養補助食品を口に加えていた。

 そして食べ終わってからは、すっかりルーティンとなった苹果と玉露の教室へ。



「那由多様、お客様です」



 行くはずの予定は延期となった。


 剣の声で廊下へ目を向ける。玉露がドアから顔を出しており、俺を見つけると頭を下げた。

 ……へえ、一人で来たのか。



「苹果は一緒じゃないんだな?」



 俺でなくても、常に周りへの牽制に勤しんでいる印象だったが。

 離れる瞬間もあるとは意外だ。



「苹果ちゃんは何も関係ないですから」



 玉露は笑顔で答えた。

 そこで違和感を見つける。


 あの全く隠せていなかった敵意が、少しだけ薄れている気がしたのだ。

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