口に甘いは腹に毒
「朝も伺ったんですけど、まだ登校されていなかったみたいで」
「ああ。それは申し訳ない」
車通学のため、あまり早く登校する習慣がなかった。
「ここで話すか? それとも場所を変える?」
「移動してもいいですか」
「もちろん構わない」
剣に目配せする。
どうやら二人だけの方がよさそうな空気だから、ついてこないように。
彼は頷いてくれた。素直で助かる。
人のいない廊下まで歩きつつ、玉露のことを観察する。
瀬戸 玉露。苹果の幼なじみ。
一見人当たりの良い好青年のように思えてその実、苹果に対する独占欲だけが異様に歪んでいる。──俺調べ。
俺が苹果を手に入れるための最難関とも言えるだろう。