口に甘いは腹に毒

「……剣先輩」

「はい。よろしければ、那由多様のこともお名前で呼ばれては?」

「んえ!?」



 ……あ!? はめられた!?


 御鏡先輩がにこにことわたしから呼ばれるのを待っている。

 な、なんて連携プレーだっ……!



「いいな。俺もそうしてもらえると嬉しい」

「ぐ、う……」



 呼び方で何か変わるとは思わない……けど。

 御鏡先輩に関してだけ、緊張感が倍以上に膨れ上がる。

 高貴な人を気安く呼ぶわけにはいかないのと同じだよ。



「な……なゆ、た先輩」

「もう少しスムーズに言えないのか? やり直し」



 鬼だ!



「ほら復唱。那由多先輩」

「……っ那由多先輩」


「大好きです」

「だいすっ……違うよね!? それは違いますよね!?」



 なんでこうもわたしは騙されやすいんだろ!?

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