今宵も鳴らない電話



 朝、目覚めると隣に愛美はいなかった。
 代わりに寝室の奥からガチャガチャという何だか騒がしい音が聞こえる。
 気だるいまま起き上がり、寝室から顔を出すと愛美が玄関で靴を履いていた。

「あ、空夜おはよう」
「おはよ……帰んの?」
「ごめん! 一限目の講義で出さなきゃいけないレポートあったのに終わってなくて。今から大学で終わらせてくる!」
「……そっか。頑張れよ」
「ありがとう! あ、すごく適当だけど朝食作ったからよかったら食べて! 勝手に冷蔵庫開けてごめんね」

 愛美はそうして颯爽と出て行った。
 昨夜よりも表情がかなり明るかった。


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