今宵も鳴らない電話
テーブルに並んでいたのは、スクランブルエッグとフレンチトーストだった。
適当にと言っていたが、少ない冷蔵庫の中身から作れそうなものを考えて作ってくれたのだろう。
スクランブルエッグは甘めの味付けで、愛美好みの味がした。
(レポートが終わってないってのは、嘘だな……)
本当は、彼奴からの連絡があったのだろう。
こんな朝から何を言われたか知らないが、嬉しそうな横顔から察するに愛美にとっては良い報せだったようだ。
スクランブルエッグもフレンチトーストも美味しいはずなのに、味がしなかった。
この朝食はせめてもの愛美の気持ちなのだろうか。
(愛美なりに気を遣ってるんだろうな)
一人きりの朝食は、カラッとした快晴の天気とは違って陰鬱とした時間となった。
無常にも現実を突き付けられる、自分たちの関係の歪さと儚さを。
また電話が鳴るのを待つ日々が続くのだろうと思った。