今宵も鳴らない電話
数回のコール音の後、愛美が出た。
電話越しだが久しぶりに聞く愛美の声だった。
「もしもし」
《空夜?》
「久しぶり」
《久しぶりだね》
久々に聞けた愛美の声に、どうしようもなく喜んでしまう自分がいた。
《すごいね》
「何が?」
《あたしね、空夜に電話しようと思ってたんだ》
「……そうなん?」
《うん。実は、あの人と別れたの》
「……え?」
思わず握っていたスマホを握り直す。
「マジで?」
《うん、やっと決心がついた。ちゃんとサヨナラできたよ》
「そっか……」
まさか会わない一ヶ月の間にそうなっているとは思わなかった。
一ヶ月前はあんなに嬉しそうに出て行ったのに。
愛美に悪いと思いつつ、高揚する気持ちが抑えられない。
「愛美、」
《それでね、空夜とこうして話したり会うのは最後にするね》