今宵も鳴らない電話
なのに一転、心臓の奥からヒュッという縮み上がるような音がした。
「な、なんで?」
動揺している気持ちを必死に隠そうとしたが、恐らく声は震えていた。
《ごめん、ずっと空夜に酷いことしてた。その自覚はあったのに空夜の優しさに甘えて……本当に最低だった》
「俺から言ったんだから、愛美は気にするなよ」
《気にするよ! 本当はずっと気にしてたの。だからもう、やめる》
「なんで……っ」
《今更ただの幼馴染には戻れないよ……っ》
――ああ、そうだった。
ただの幼馴染が嫌で、その関係を壊したかったのは自分だった。
「愛美、俺は……っ」
《ごめんね、空夜》
愛美の声は震えていた。
《ありがとうね》
電話越しの涙声を聞いて、空夜は何も言えなかった。
程なくして通話が切られる。