今宵も鳴らない電話
静寂の夜、突然別れは訪れた。
耳に当てていたスマホを持った手が、ダラリと垂れ下がる。
空夜は心のどこかで、いつか愛美が振り向いてくれるのではないかと期待していたのかもしれない。
都合の良い関係でもいい、淋しさを埋めるための存在でも構わない。ただ愛美には自分がいると、気づいて欲しかった。
愛美のことが好きだった。
彼女の屈託ない笑顔と淋しさを隠しきれない瞳に惹かれ、いつの間にか恋焦がれるようになっていた。
愛美のことが好きで、それしか考えられないくらいに好きで。
どうしようもない男に傷つけられている姿が見過ごせなくて。
本当は何度も耳を塞ぎたかったし、目を逸らしたかった。
今愛美が誰と一緒にいて、誰とキスして誰に泣かされているかなんて、知りたくなかった。