今宵も鳴らない電話

 愛美と再会したのは、本当に偶然だった。
 先輩に誘われて参加した異業種交流会で、たまたま会ったのだ。
 愛美はある企業の社長秘書になっていた。

 あの夜以来、空夜はずっと後悔していた。
 幼馴染のままであれば、あんな風に終わることはなかったかもしれないのに、と。

 もう二度と戻れない関係になってしまったからこそ、愛美が「久しぶりだね」と自分から声をかけてくれたことに驚いた。
 ぎこちない挨拶だったが、空夜も「久しぶり」と返した。

 今何をしているのか、から始まって仕事の話が中心だった。
 会話のテンポは思っていたよりも軽く、途切れることなく続いた。
 この会話のテンポ感に懐かしさを覚えていた。

 お互い社会人となり、環境が変わったからなのだろうか。案外普通に会話できていたことに驚いた。
 恐らく愛美が柔らかい口調で穏やかに接してくれたからだろう。気まずくならないように、慎重に言葉を選びながら。

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