今宵も鳴らない電話

 八年の間に愛美は雰囲気が変わった。
 凛とした芯のある女性に成長していた。

 愛美はきっと、自分を変えたかったのだと思う。
 淋しくてつらくて寄りかかるしかなかった自分を変えたくて、あの夜に全てを捨て置く覚悟だったのだ。
 その気持ちが今なら何となくわかるような気がした。


「愛美ちゃん、なんか大学の時と雰囲気変わったよな」

 同窓会で一度会ったきりの松原でさえ、愛美の変化には気づいたようだ。

 皆が見守る中で静かに歩みを進める愛美は、花が咲いたように美しかった。
 純白を美しく纏い、一歩また一歩と真紅の絨毯の上を進んでゆく。
 幸福の笑みを咲かせる彼女は、空夜が知る中で一番輝いて見えた。

 やはり愛美には、笑顔が似合う。
 毎日笑顔にさせてやるのに、って思っていたこともあったけれど――愛美は自ら幸せを掴み取ったのだ。

「愛美、結婚おめでとう」

 そして、ありがとう。
 長きに渡る空夜の初恋は、こうして幕を閉じた。

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