愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 普段使わない筋肉を使ったせいか、どこか筋肉痛にも似た感覚があった。
 違うのはこれが筋肉痛ではなく、昨日アルドから幾度となく与えられた絶頂のせいだということで――


 そこまで考えた私は慌てて両頬をパァンと叩く。

“一人で悶々と私は!”

 そしてその突然の奇行にすらもう慣れたのか、ミィナは小さくため息だけを吐いて淡々とマッサージを続けてくれた。



「……凄いわね、歩けるようになったわ」
「元々怪我とかではありませんから」

“それもそうね”

 さらりと返されたその言葉に納得した私はミィナに手伝って貰い着替えを済ませ、アルドの私室から出る。

「午後からは何をしようかしら」

 今から訓練に参加するのは流石に気が引けるが、ただの人質という役割しか与えられていなかった私にはこなす公務などはなかったからだ。
 
“普通の令嬢や夫人なら社交よね”

 お茶会やパーティー。
 そこで行われる情報の共有や、関係を築き後ろ盾を得るということは私にとっては必要不可欠。

 というのはもちろんわかっているのだが。


「……ミィナ、私に何か手紙とか来てない? 招待状的なやつ」
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