愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
2.はじめる決意を固めたわ
「お嬢様の宮へご案内致します」
“お嬢様……!?”
アルド殿下の執務室を後にした私に一人のメイドが声をかける。
メイド長ではなく、見るからに若いメイドが来ただけでも私のこの国での待遇を表しているというものだろう。
もちろんそれだけではない。
人質だとしても、一応は正妃で嫁いだ私を王子妃や王太子妃ではなくお嬢様呼び。
それは『どうせすぐに追い返されるのだから』という蔑みを含んだ言い回し……なのだが。
“い、家ではそんな呼び方されなかったわ……!”
望まれなかった三人目の姫である私を冷遇する家族のせいで、王宮の使用人たちも私を構うことなんてしなかった。
私を姫様と呼んでくれたのも、お嬢様扱いをしてくれたのも専属護衛のジークだけで――
「貴女、名前は?」
「ッ」
私が声をかけると、その若いメイドがビクリと肩を跳ねさせる。
“怒られると思っているのね”
正妻という肩書もやはりただの人質という印象には勝てないようで、だからこそ彼女自身も不敬だとわかっていて口にしたのだろう。
“お嬢様……!?”
アルド殿下の執務室を後にした私に一人のメイドが声をかける。
メイド長ではなく、見るからに若いメイドが来ただけでも私のこの国での待遇を表しているというものだろう。
もちろんそれだけではない。
人質だとしても、一応は正妃で嫁いだ私を王子妃や王太子妃ではなくお嬢様呼び。
それは『どうせすぐに追い返されるのだから』という蔑みを含んだ言い回し……なのだが。
“い、家ではそんな呼び方されなかったわ……!”
望まれなかった三人目の姫である私を冷遇する家族のせいで、王宮の使用人たちも私を構うことなんてしなかった。
私を姫様と呼んでくれたのも、お嬢様扱いをしてくれたのも専属護衛のジークだけで――
「貴女、名前は?」
「ッ」
私が声をかけると、その若いメイドがビクリと肩を跳ねさせる。
“怒られると思っているのね”
正妻という肩書もやはりただの人質という印象には勝てないようで、だからこそ彼女自身も不敬だとわかっていて口にしたのだろう。