愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 最もいいのは政略結婚の相手を好きになることだが、そうなったとしても結果論。
 政略結婚のイメージアップには繋がらない。

 ――と、なれば。

「やっぱり私が男になるしかないわね?」
「は?」
「私を男として好きになって貰い、恋愛の良さをわかって貰うのが正解だわ!」
「えっ、えっ」

 夫のいる私ならば身元もハッキリしている。
 ただの思い付きだが、ただの思い付きとは思えないほどいい考えだと思えたのだが。

「何もかも間違っておりますから……!」

 ガシッと私の両肩を掴み、大きく顔を左右に振りながらミィナがそう言った。

「え、そんなことはないと思うんだけど」

 なんてギリギリまで粘ってみるが、どう説明しても頷いてくれない様子に私の方が折れる形となった。


 
“観察しろって言われたけど”

 気配を消して王女の後をつける。
 ミィナは気配を消せないので、私一人で彼女の後を追い驚いた。

「私のこと、気付いてるわね」

 気配を消す能力には自信があったのだが、クリストフ卿はそんな私の場所を正確に把握しているようだったのだ。
< 120 / 340 >

この作品をシェア

pagetop