愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 どこかの国にそそのかされて大国のグランジュへと小競り合いを仕掛けるしかできない弱小国家だ。

 そもそも私との結婚が有益だったのであれば私は名実ともに王太子妃であり人質妻ではなかっただろう。


 ――それに。

“クリストフ卿は伯爵家の次男と言っていたわ”

 そして兄が伯爵家を継ぐことがすでに決まっているのだとも。

 万が一彼が伯爵家を継いだのであれば彼らが結ばれる未来もあったのかもしれないが、爵位のないただの護衛である次男と王女では釣り合わないのだ。

「そういうことだったのね……」

 政略結婚を潰したい理由は、自分では叶わない幸せな恋愛結婚をせめて兄にはして欲しかったというのもあるのかもしれない。
 だからあんなにも必死に足搔いていたのかもしれないと、そう思ったのだった。
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