愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 もちろん勝ち進めば団長や副団長になれるという訳ではないので公式の序列とは違うのだが、この模擬試合で上位に食い込めばその能力を評価され実践投入の機会が多くなる。

 実践の機会があればあるほど手柄を立てる機会にも恵まれるというのは当然のことで、結果的にこの序列は騎士たちの地位と同意と考えてもいいほど重要なことだった。


 そんな喜ばれての休暇を与えられた私は、今まさに私室の窓から庭園の散歩をしている王女とクリストフ卿を眺めている。

“アルドの執務室から騎士の訓練場が見えるのと同じで、私に与えられた部屋から王城の庭園が見られるのもきっとそういう気遣いなのね”

 私の場合はぶっちゃけ騎士の訓練場の方が窓から飛び降りるだけで通えて便利なのだが、流石に普通の王太子妃は窓を移動場所のひとつと認識はしないだろうということは最低限わかっていたので文句は言わなかった。


「片想い……なのかしら」

 散歩デートをしているらしい彼女たちを見つめながら思わずそんなことを呟くと、私の心がツキリと痛む。

“振り向いて貰えないというのは本当に苦しいことだわ”
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