愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 お金や権力で相手の気持ちを無視し無理やり振り向かせる方法はあるけれど、それらはどの方法も真実の心ではなく虚しさが付き纏う。
 私だってアルドが振り向かずただただ冷たく放置されていたのなら、今こうしていなかったかもしれない。

 だからこそせめて彼女がその虚しさを感じないように、最終的に想いが報われなかったとしても苦しい後悔だけが残らないよう想いだけでも伝えさせてあげたい。そう思った。

“それに王女がアルドの幸せを願っていたように、アルドだって彼女の幸せを願っているはずだもの”

 ならばもし、万が一にでも二人が想いを通じ合わせたとすれば未来は変わるかもしれない。

「だって人質でしかない私に愛人を含めた身の安全を保障するとまで約束するような人だもの」

 きっとその時アルドなら背中を押してくれる。

 その可能性が十分にあると考えた私は、王女のその片想いが実るよう可愛い義妹のために一肌脱ぐことを決めたのだった。


 ◇◇◇


 王女の恋を応援する。
 そう決めた翌日の朝、私は王女の私室から一望できる区画の庭園にいた。

「なにをするつもりですか」
「水を撒くのよ」
「はぁ……?」
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