愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
だが、刺繍という嗜みを学んでこなかったことを少しだけ後悔していた私は、ミィナから王女の話を聞いた時に教えてもらいたいとそう思ったのだ。
その切実な気持ちが伝わったのだろうか、わざとらしく大きなため息を吐いた王女がボソッと「お座りになったら」と着席を促してくれる。
そしてその一言が私の胸をじわりと温かくさせた。
“こういうところ、アルドとそっくりだわ”
冷たく突き放そうとするくせに最後の慈悲だけは捨てきれない。
瞳の色だけでなくそんな性格まで似ているこの兄妹に、私はなんだか嬉しくなった。
私に嫌がらせをし追い出そうと画策していたらしい王女殿下との、どこか和やかなひと時というアベコベな時間。
そんな刺繍の時間が始まった、のだが。
「全然だめですわね」
「あ、ここ、ここにも針を刺したら……いたっ!」
「ちょ、ハンカチに針を刺しなさいよ!? 誰が指に針を刺せっていいましたの!」
思い切り針を刺してしまった指を慌ててみると、じわりと玉のような血が滲む。
刺繍自体は案外悪くないと思う。
その切実な気持ちが伝わったのだろうか、わざとらしく大きなため息を吐いた王女がボソッと「お座りになったら」と着席を促してくれる。
そしてその一言が私の胸をじわりと温かくさせた。
“こういうところ、アルドとそっくりだわ”
冷たく突き放そうとするくせに最後の慈悲だけは捨てきれない。
瞳の色だけでなくそんな性格まで似ているこの兄妹に、私はなんだか嬉しくなった。
私に嫌がらせをし追い出そうと画策していたらしい王女殿下との、どこか和やかなひと時というアベコベな時間。
そんな刺繍の時間が始まった、のだが。
「全然だめですわね」
「あ、ここ、ここにも針を刺したら……いたっ!」
「ちょ、ハンカチに針を刺しなさいよ!? 誰が指に針を刺せっていいましたの!」
思い切り針を刺してしまった指を慌ててみると、じわりと玉のような血が滲む。
刺繍自体は案外悪くないと思う。