愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「そ、れは……そうですね、王太子殿下なら受け取ってくださると思いますよ、その、多分。あ、もし本当にお渡しになられるのならこのハンカチは呪術的なものではありませんと一筆お書きになることをお勧めしますが」
「ミィナ、致命傷よ、それ……」

 辛辣な侍女の言葉に更なるダメージを負った私が温室を出る瞬間王女たちの方を振り返ると、まだ少し心配そうな表情を浮かべている王女と相変わらず無表情で佇むクリストフ卿がそこにいた。


“表情豊かな王女にはあれくらい無表情な方が釣り合っているのかもしれないわね”

 なんて、二人の姿を見た私はそんなことを考えつつ今度こそ温室の扉を閉めたのだった。
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