愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「甘えでもなんでもいいんで降ろしてくださいぃっ」
「黙って!」
「んぐっ」

“来たわ!”

 必死に幹にしがみついているミィナの口を塞ぎ息を殺して見つめた先にいるのは午後の散歩に向かうモニーク王女とクリストフ卿である。

「毎日この時間に二人でこの庭園を見て回るのも日課みたいなのよね」

 木の上からほくそ笑んだ私は、彼らが私とミィナが潜んでいる木の下を通るのを今か今かと待ち、――そして。

「今よ!」

 私の合図で彼らの上に集めた花びらをふわりと舞うように撒く。
 淡い色の花びらが降り注ぎ、幻想的なその中にピンクブロンドの髪が太陽光を受けてキラキラと輝いた。

 美しい。
 この美しい光景はまさにロマンチックと言っていいだろう。

“このいい雰囲気の中でお互いを見つめ合えば、すぐに恋へと落ちちゃうわ!”

 ミィナと一緒に花がらの中から比較的綺麗な花びら探すのは大変だったが、この光景を作り出せたのなら頑張ったかいがあったというもの。
 私は自身の作り上げたこの光景に満足し、自然と口角が緩むのを感じた。

 の、だが。

「ま、また貴女ですの……!?」
「え」
< 136 / 340 >

この作品をシェア

pagetop