愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「私の持ってきた荷物はミィナが宮まで運んでくれたの?」
「あ、はい。トランク一つしかありませんでしたので」
「そうなんだ、ありがとう」
 
 ちなみに持参金もなしだ。
 人質として身を差し出すのだから不要だと体裁すら整えて貰えず、それもここでの冷遇のキッカケになっているのかもしれない。

 出来れば愛用していた剣くらいは持込みたいところだったが、輿入れで剣を片手に単身乗り込むのはあまりにも物騒すぎると青い顔になったジークに諭され断念した。 

“まぁ、確かに暗殺容疑とかかけられてもやっかいだしね”

 それに愛用だったが、特別思い入れがあった訳ではなかったので剣自体に未練がなかったのは不幸中の幸いだろう。


“出来れば木剣でもいいから欲しいわね、鍛練しないと鈍っちゃうわ”

 
 ――なんて考えていると、あっさりと目的地へとたどり着いた。

「王子妃宮って、思ったよりも近いところにあるのね」
 
 思わずそう呟いて、すぐにハッとし口を閉じる。
 ミィナには聞こえていなかったようでほっとした。

“近いなんて当たり前よ、本当なら夫となった王子が通う場所だもの”
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