愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 サァッと一気に血の気が引くが、体格のいい長身男性、それもちゃんと訓練を受けて一国の王女の護衛騎士に選ばれた相手にはどうすることも出来ない。
 
「待って、降ろしてから行ってくださぁぁい!」

 というミィナの叫びというか嘆きを聞きながら、私は必死の抵抗も虚しくサクサクと歩く王女のあとを付いていくしかなかったのだった。


 そんなこんなで王女に連れられたその先は。



「……今度は何をやらかしたんだ?」
「お兄様! 本当にそろそろリヒテンベルンに送り返してくださいませ!」

“ま、まさか突き出されるなんて”

 妹の怒りを受けたアルドがじとりと私に視線を向ける。

「違うの、私はロマンチックな演出をしたくて! ちょっと水浸しにはしちゃったんだけど」
「それも貴女の仕業でしたの!?」

 カッと睨まれビクリと肩を跳ねさせた私を見たアルドが、大きなため息を吐きながらクリストフ卿から私の身柄を受け取った。

「あー、まぁ多分100%こいつが悪いな、すまなかった。悪気がなかったということだけは考慮してやってくれ」
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