愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 やれやれと言った表情で肩をすくめ、私の代わりに謝罪したアルドをムスッとしている王女が不満そうに見上げる。

「こいつは俺の方でしっかり言い聞かせておくから」
「本当にそうしてください!」

 その言葉にフンッと鼻を鳴らした王女がアルドの執務室から出る後ろ姿を首根っこを掴まれた状態で眺めていた私は、少ししょんぼりとしながら彼を見上げた。

「……ごめんなさい、執務の邪魔をしたわ」

 俯いた私を解放したアルドが、指先でコツンと私の額をつつく。

「どうせ空回ってんだろ。話を聞いてやるから少し待ってろ」

 呆れつつも微笑む彼に頬が熱くなった私は促されるがままソファへと腰かけた。

 そして再び書類へと視線を戻したアルドは手早く何枚かに記入し、すぐにまた立ち上がる。

「急ぎのはこれで終わりだ。ダレアももう上がってくれて構わない」
「かしこまりました」

“え、もしかして私のために仕事を切り上げてくれたの?”

 その事実にぽかんとしていると、すぐに私の元へと来てくれた彼がそっと手のひらを差し出した。
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