愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 思わず聞き直した私に大真面目な表情でそう断言したアルド。そんな彼に思わず半眼になるが、一瞬おどけた表情になった彼を見て私を励まそうとわざとそういう言い方をしているのだと気付いた。

「もしあいつがもっと大々的にクリストフを好いているのだと言うようなタイプなら、逆にわがまま姫に甘い王家として威厳はないが認めることも可能だった」

 ここグランジュは大国で、軍事力もある。
 そのお陰でむしろ平和だといえる現在ならば、必ずしも政略結婚で更なる発展を狙う必要も平和協定を結ぶ必要もないのだろう。

「だがモニカは誰よりも王家の責務を見ている。自分のわがままで結婚という手を潰すことは言わないんだ」

 それが王族としての彼女の意思ならば、それを尊重するのもまた王太子ということなのだ。

“兄としてはきっと誰よりも幸せになって欲しいと思っているはずよ”


 少し前の私なら、きっとそんなことは思わなかった。
 血を分けた兄妹だからといって、相手を尊重し大事に出来るかというのは別問題なのだと、祖国での自分を重ねてそう考えたはずなのに。

 ――今は、違う。
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