愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 どこかで武勲を立ててきたなら叙爵される可能性もあるかもしれないが、王女を第一に行動しているクリストフ卿が王女を手に入れるために彼女の側を離れるなんていう想像はどうしても出来ない。


 上手くいきそうなのに上手くいかないその歯痒さで胸が苦しくなった。


「そんな顔をするなって」
「アルド」

 苦笑し私の前髪にそっと触れたアルドがソファから私の横に移動し、体を抱き寄せられた。
 彼の胸に頭を預け、体を伝い聞こえる心臓の音に耳を傾ける。

 もどかしい思いをしているのはきっと私だけではないのだろう。

「モニカのためにありがとうな」

“お礼を言われることは何もしていないわ”

 私がしたのはただ地面を荒し、血染めのハンカチを錬成して彼らのひと時を邪魔しただけ。
 その結果アルドの仕事の手も止めさせてしまった。

 何一つ満足に出来ず、空回ってばかり。

 そんな私なのに、彼はお礼を言ってくれるのだ。

 
「今日は疲れただろう。もう寝るか」

 私を気遣うように微笑みながらそう提案したアルドに促されベッドの中へ入ると、「おやすみ」と笑った彼が私の頭を撫でた。
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