愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「安心しろ、落ち込んでいる妻に行為を要求するような男じゃないつもりだから」

 少し気恥ずかしそうにそう言った彼に小さく吹き出してしまう。


“あぁ、好きだなぁ”

 最初は最低な奴だと思ったし、お互いに恋をすることを無理やり約束させたくせに、私自身が一番彼を好きになれるのかが不安だった。
 それなのに今では彼から感じる温もりに安堵し、頼りたくなってしまう。

 祖国では誰かに甘えるなんて考えは存在しなかったが、今では彼に甘えたいという願望まで芽生えつつあった。

“もっと、この温もりに包まれたい”

 隣で眠る彼を見つめ、服越しの温もりを感じるだけじゃ物足りないのだ。

 わがままを言ってもいいのだろうか。
 一瞬そんなことが頭に過り、昔のように諦めるのではなく口にしてみようとそう考えた私は、そっと隣で目を瞑る彼の腕に体を寄せた。


「私は、触りたいんだけど」

 バクバクと鼓動が早くなり、緊張からごくりと唾を呑む。
 ぎゅっと目を閉じて彼からの返事を待つが、一向に何も言われず段々と不安になった私が片目を開けて彼の様子を窺うと、唖然とした顔でアルドが固まっていた。
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