愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!

20.この幸福が、届く距離にあるというのに

“気持ちいい”

 彼の熱い舌が口内をうごめき、私の舌と激しく絡む。
 くちゅりの音を溢しながら角度を変えて何度も深く口付けると、自然と私の体から力が抜けた。

 
「セヴィーナ」

 呟くように名前を呼ばれ彼と視線が絡み合う。

“今からアルドに抱かれるんだわ”

 他の誰でもなく、この私が。
 間違いでも、仕方なくでもなく彼が見つめる先にいるのが自分なのだということが少し誇らしい。

 劣情が孕むそのアーモンドのような瞳に写り込む自身の顔もまた情欲に揺れ、早く触れて欲しいとそう思った。

 そんな私の気持ちに気付いたのか、彼の手のひらがそっと胸に触れる。
 ゆっくり感触を確かめるようむにむにと胸を揉まれると、それだけで小さな嬌声を上げてしまった。

「気持ちいいのか?」

 くすりと笑いながらそう聞かれた私が素直に頷くと、どうやらからかうつもりで言っていたらしくアルドの頬がじわりと染まる。

“素直な答えが返ってくると思わなかったのかしら”

 頬を染めた彼が少し口をムッと曲げた。
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