愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 この表情だけならば怒っているのだと思っただろうが、彼が私に触れる手も、彼が私を見つめる視線も温かさが滲み出ており、照れ隠しなのだと確信する。

“むしろ嬉しそうだわ”

 彼が嬉しいなら私も嬉しい。
 そう思った私は、素直に伝えようと思い口を開いた。
 
「アルドに触られると、ふわふわする」
「そ、そうか……?」
「もっとアルドに触って欲しい、アルドがいいの」

 自分の心に浮かぶまま本音を口に出すと、赤くなったまま一瞬固まっていたアルドがぎゅうっと強く私を抱き締めた。

「……あんまり可愛いことを言うな、理性が利かなくなるだろ」
「利かなくなったらどうなるの?」
「一回じゃ、収まらないかもしれない」
「それは……」

 熱っぽくそんなことを言われ、ドクンと心臓が跳ね――

「……ダメなことなの?」

 私がそう聞くと、一瞬きょとんとしたアルドが吹き出した。

「いや、ダメじゃないかもな。夫婦仲がいいことは悪いことじゃない」

 くすくすと笑みを溢しながら再び口付けられると同時に夜着のリボンをほどかれる。

 ぱらりと簡単に肌が露になり、アルドが首筋に吸い付いた。

「ッ!」
< 152 / 340 >

この作品をシェア

pagetop