愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 いい反応をしてくれる彼女に思わずクックッと笑うと、それはそれはまたいい反応をしてくれた。

 そんな彼女の反応を少し面白く感じながら、私はリヒテンベルンでジークと訓練する時によく着ていた服に袖を通す。

“ずっと着てきたからボロボロね”

 主に訓練時に着ていた服で、フリルなどのヒラヒラは一切なく、どちらかといえば下町の……それも少年が着るような服に近かった。

 邪魔な髪をひとつに束ねて帽子の中に隠すように入れ込むと、少し小柄な体型のお陰で路上で花などを売っている物売りの少年に見えるだろう。

“いい感じじゃない”

 私はその出来映えに満足し鏡に向かってにこりと笑みを作ると、先日王女と一緒に刺繍をしたあのハンカチを手に取った。

「な、何を、何をなさる気なの……!?」
「大丈夫です、私にお任せしてくれればそれで全て解決しますから!」
「し、信じられな……んんっ、んんんっ!!」

 舌を噛まないようにと王女の口にハンカチを詰めて結び、王女を肩で担ぐ。

「なるべく目立つように行くわよ!」
「んんんんんっ!!」
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