愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「セヴィーナなら自分で取りに行く……いや、そもそも飲み物の準備がいるということにすら気付かない可能性が……」
「お二人を拐った賊の情報はあるんですか?」
「ハッ! 王女殿下を拐ったのは割りと小柄な男で、肩に担ぎ走り去る姿を数々の使用人が見ております!」
「小柄な男が、肩に……」

 その説明に嫌な予感がし、再びダレアの方を見るとおそらく同じことを考えているのか青ざめつつもピクピクと口角が反応している側近がそこにいた。

“まだ本物の賊である可能性もあるというのに、こいつは”

 そんな彼の様子に若干呆れつつも、俺は溢れる冷や汗を拭うことなく報告に来た騎士へと向き直る。

「セヴィーナを拐った賊を見たやつは?」
「申し訳ありません、目撃情報は王女殿下のみになります! その事から本命は王太子妃で、王女殿下をわざと目立つように拐い、その間に実行されたのではないかと思われますッ!」
「な、なるほど。うん。そうだな、あぁ、そうだろうな、確かに王太子妃がいなくなれば次の王太子妃を選ばなきゃならないもんな。うん。そうだ。自分の娘をな、王太子妃にしたい貴族とか、いるもんな」
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