愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「ぶふっ、王女殿下を囮にする自国の貴族の本命が、ですか? ――ッ!」

 思わず吹き出したダレアの脇腹を思い切りつねった俺は、わざとらしく咳払いをして顔を上げた。

「その二人を狙ったのであればすぐには危害を加えないはずだ。作戦を練り確実な解決を目指す、いつでも出られるように準備をして待機していてくれ。いいな!? 勝手に出るなよ!?」
「賊の狙いを見極め奇襲をかけるんですね、かしこまりました!」
「そうだ、頼んだぞ。あ、あとミィナという侍女がいるからクリストフ卿と一緒に呼んできてくれ」
「奇襲をかけられたのはこっちですけどね、ぷぷっ」

 ボソッとそんなことを呟いたダレアの脇腹を再びつねった俺は、さっきの騎士がすぐに呼んできてくれたらしく青い顔をして執務室に入ってきたミィナという侍女を見る。


「……まずいことになった」
「お、王女殿下が拐われたって伺いました、あとお嬢様までもが……っ」
「あぁ。だがセヴィーナが拐われた姿を見た者はおらず、そしてモニカを担いで拐ったのは小柄な男だそうだ」
「……? 小柄な人間が、華奢とはいえ人間ひとりを担いで……?」
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