愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「宣戦布告、ですね。人質姫が人質を取って祖国に戻る、完璧に戦争が始まる火種になるやつですよ」

 ダレアのその冷静な分析に大きな溜め息を吐く。
 嫁いできたばかりの頃なら俺もそう思っただろうが、彼女を多少なりとも知った今ならば話は別だ。

「リヒテンベルンへモニカを連れていくことはしないだろう。むしろ近くで見つけられるのを待っている可能性すらある」
「見つかったら、どうなるんですか……!?」
「騎士が見つけたら賊として捕らえられるだろうな」

 おふざけだったとするには目撃者が多い。
 だが変装してわざと目撃者を作ったのだ、見つけて欲しい意図が彼女にはある。

 
「……クリストフ卿か」

 モニカの為に一人で追い、そして賊と対峙して救い出す。
 その姿に感動して想いを伝え合うロマンチックな二人、というものを演出したかったのかもしれない。

 そしてその思惑通り、俺が呼ぶ前に彼は一人でモニカを探しに出てしまっていた。
 

“それに単身で乗り込み救い出したのなら功績だって与えられる可能性もある”

 その褒賞次第では二人が結ばれる未来だって作れるだろう。

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