愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!

22.計画とは、必ずどこかで軋むもの

「何を考えているんですか……!」

 ハンカチを外した途端にそう怒鳴られた私は、だがそれも正当なことだと判断し頭を下げる。

「それはその、ごめんなさい」
「なっ、王太子妃が軽々しく頭を下げないでいただけます!?」
「え、ご、ごめんなさい……?」

“謝ったことまで怒られたわ”

 確かに彼女のいうことは一理あるが、ここには私たち二人だけなのだ。
 悪いことをしたら謝る、許されるかは別としてそれでいいかと思ったのだが――なかなか難しい。


「で、何が目的なんです? こちらはリヒテンベルンのある方向じゃありませんが」

 警戒しつつ周りを見渡した王女は、困惑した表情になる。
 私が向かったのはもちろんリヒテンベルンのある方向ではなく、その正反対の方向だ。

「流石に王女殿下を拐って祖国の方に向かうなんて恐ろしいことしないわよ!?」
「王女を拐うということに恐怖を持ってくださる!? 貴女戦争を起こしたいの!?」
「起こしたくないですよ! だから万が一にもそう思われないように反対方向に来たんだもの」

 一応私もこの行為のリスクは考えたのだ。
< 172 / 340 >

この作品をシェア

pagetop