愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そしてかなり高リスクだということも認識し、その上で彼女を拐うことにしたのである。

“この世にリスクなく得られるものなんてないわ”

 リスクを冒しても得られないことだって多い。
 祖国での家族愛が私にとってのソレだった。

 そしてだからこそここの人たちには少しでも心から笑って欲しいとそう思うのだ。

“なんだかんだでいつも助けてくれるミィナに、嫌いだという感情を向けてくれる王女。そして包んで認めてくれるアルド……”

 いないもの扱いが最も堪えるからこそ、どんな感情でも貴重だと思った私は改めて王女の方を見る。
 こんな場所に突然連れてこられたのに、警戒はしているが怯えてはいない。

 それだけ彼女の肝が据わっているということでもあるが、それと同時に私が危害を加えないと思ってくれているのかもしれないと思うと少しだけ嬉しかった。

 もちろんそれは私自身を信じてくれているというよりは、夫、つまり彼女の兄の存在が大きいのだろうが。

「姉妹喧嘩ってこういうものかしら」
「かなり物騒な姉妹喧嘩ですわね……」

 うっかり口に出てしまったその言葉にげんなりした声でそう返され苦笑する。
< 173 / 340 >

この作品をシェア

pagetop