愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 万が一私が彼の剣で怪我でもしたら、せっかくの計画が水の泡どころか、王族に連なるものへ危害を加えたとして処罰は免れない。

 つまり私は素手でこの国のトップクラスの騎士と対峙して無傷でいなくてはならないということだ。
 
“でも、勝たなくてもいいという状況ならそれも可能だわ……!”

「目的はなんだ?」

 淡々と質問をしてくるクリストフ卿には何一つ答えず、私は姿勢を低くし突撃する。

“間合いに入らなくては!”

 長剣の間合いは案外広い。
 だがその変わり、懐まで入られてしまうと長剣では対処出来ないのだ。

「多少は速いが……」
「ッ」

 彼まであと少しというところまで近付いたタイミングで素早く踏み込まれ背後に思い切り飛ぶ。
 もう一歩欲張って踏み込んでいたら斬られていたかもしれない。

“流石に一筋縄ではいかないわね”


 以前騎士と訓練試合をした時は砂利を利用し意表を突いたが、ここは花畑。
 それもミィナのお母様の思い出の場所だ。

 そんな場所の土を使うために花を引っこ抜くのも、そもそもこの場所での長期戦も気が引ける。

 それにここでの一大イベントは私との戦闘ではない。
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