愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 彼からされた提案も、あまりにも失礼ではあったものの、それらは私にとって不利益になるものはひとつもなかった。

 むしろ人質である私が王子妃だからとでしゃばる方が危険が多い。


「なによ、いいとこだってちゃんとあるじゃない」

 ふふ、と思わず笑みが溢れ口角が上がる。


 ――きっと大丈夫。
 私は彼を好きになれる。

 そしてその気持ちが、この国で私を支える柱になるから。

“これからやりたいことがいっぱいあるわ”

 王女らしいことはあまりしてこなかった私は、きっと失敗することも多いだろう。

 上手くいかないことばかりで、旦那となったアルド殿下は現状味方とは言いきれないけれど。


「まずはこの国のマナーを学ばなくちゃ。社交だってしなきゃだし、視察にだって行きたいわ」

 まだお互い好きではない旦那様と一緒に。


「私の方は、はじめる決意をしたんだから覚悟なさい。誰と恋してもいいって約束したのはアルド殿下なんだから」

 私はそう小さく、だがハッキリと声に出し今日から暮らすこの部屋を再び見回したのだった。
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