愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 まるでこの場にいる誰もが、ひとつの恋の終わりを確信しているみたいに――


「いやいやいや、処罰ではなく褒賞でしょ」


 そしてそんな雰囲気をぶち壊すように私は明るく訂正した。

「いや、あのな。セヴィーナの国ではどうだったのかはわからないがここグランジュでは……」
「はぁ? 私の国ではって何よ!? 私の国って話なら嫁いで来たのよ、ここグランジュが私の国だわ!」
「おまっ、今は俺たちが言い合ってる場合じゃ」

 まだ何かを言っているアルドを無視した私は王女の方へと向き直る。

「貴女は拐われましたか?」
「えぇ、そうよ。あれだけの目撃者がいるんだもの、そこを今から覆しクリスの罪を無かったことには出来ないわ」
「では、拐ったのは誰ですか?」
「そんなの、貴女が一番よくわかっているでしょう」

 ため息混じりに言われたその言葉に私も大きく頷く。

「私は誰です?」
「王太子妃、と答えて欲しいのかしら」
「他には?」
「ハッ、お兄様の妻、この解答?」
「他」
「……? 他って、まさかリヒテンベルンからの、人質と言わせたいの……?」
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