愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 苛立った表情から段々と怪訝な顔になる彼女に私はニヤリと口角を上げ、今度はダレアの方へ向いた。

「人質が王女を拐ったわ。どんな処罰がくだるのかしら」
「良くてすぐに処刑、悪くて拷問のちに処刑ですね。意図を確認する必要がありますから」
「大変だわ、アルド! 私ってば処刑されちゃうみたいよ!」
「わかってるよ、だから騎士たちには別を探させて俺たちでこっちに来たんだろ」

 私の言葉にそう断言するアルド。
 そんな彼の言葉が嬉しくて胸の奥がじわりと温かくなる。

“私を処刑させないために来てくれたんだ”

 ここに彼らまでもがいるのは想定外だったが、その理由が私を喜ばせる。
 それに、むしろ好都合でもあった。

 だってスムーズな口裏合わせが出来るから。


「私と王女、どちらが大事?」
「は?」
「聞き方を変えるわ。王太子妃と婚約者もまだ決まっていない自国の王女、どちらの優先順位が高い?」
「そ、れは」

 聞かれたアルドが困った様子で王女の方を見る。

“ま、アルドにとっては酷な質問よね”
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