愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 眉を下げて口を閉ざしてしまったアルドに代わり、再び口を開こうとした私だったがそんな私の言葉を遮るようにアルドが先に口を開いた。

「王太子妃は未来の国母だ、その選択肢ならば王太子妃の優先順位の方が高い」
「王太子殿下!」

 アルドの言葉にクリストフ卿が咄嗟に怒りを露にするが、他ならぬ王女が彼の腕を擦り宥める。

「あの質問はセヴィーナとモニークという二人の話ではなく立場の話だわ。そしてその前提ならば事実よ」
「そうです。私と王女なら私を優先し守らなくてはなりません」
「調子に乗らないでくださる!? だからその立場の前提ならって言って……」
「クリストフ卿、貴方は王女の護衛騎士ですがこの国所属の騎士でもあります。ならば当然私を優先すべきです」

 私がそうキッパリ言いきると、王女の顔が怒りで赤く染まる。

“まぁ、想いを寄せる相手にそんなことを強要したら怒るのも当然よね”

 完全に悪役ポジションになってしまったことに思わず私が苦笑した時、後ろからプッと吹き出す声が聞こえた。

 その笑い声に釣られるように振り向くと、やはりまだどこか困ったように眉を下げつつ笑うアルドと目が合う。
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