愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「あー、なるほど。一緒に拐われた王太子妃の目撃情報はない、だったもんな」
「はい。だって私は拐われていないので」
「当たり前じゃない、だって私を拐ったのが」
「どこの賊かしら?」
「さぁ、確認する前にクリストフ卿が斬ってしまったからな」
「な、何を……?」

 アルドより少し遅れて内容を理解したらしいダレアが思い切り吹き出す。
 ここは頭脳派の側近としていい感じに説明して欲しかったのだが、彼がプルプルと全身を振るわせて後ろを向いてしまったので私は早々に諦めた。

“本当に笑い上戸なんだから”

「クリストフ、我が妻であり次期国母を優先して賊の手から守り、そしてすぐに王女の救出に尽力してくれたことに感謝する」
「それなのに、王女の救出についていきたいなんて我が儘まで言ってごめんなさいね?」
「セヴィーナは色々全部反省しろ。俺の寿命が縮む」
「それは……ごめんなさい」

 本気で叱る雰囲気を察し謝罪を口にする。
 今回の作戦は、少しでも間違えば私自身だけではなくクリストフ卿までもが処刑されかねない事態だったのだ。

「つまり、クリスは失態を犯してない、ということになるの?」
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