愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「モニカを拐った賊をその場で処刑したことで黒幕の思惑を確認出来なくなったからな。そこはまぁ失態と呼べるのかもしれないが、護衛としては間違ってはいないから不問だ」
「黒幕の計画がどんなだったか闇の中だなんて残念だわ」
「ほんっとに恐ろしい黒幕だ」
「ふっ、フンフーン……」

 ジロリと睨むアルドの視線を鼻歌で誤魔化しつつ、私はまるで今思い付いたかのように両手をパチンと音を立てて叩く。

「王太子妃を守り、拐われてしまった王女殿下もたった一人で無傷で救った高潔な騎士には褒賞が必要なんじゃないかしら!?」

 わざとらしいほど大きな声でそう提案すると、褒賞の内容までを察したアルドが大きなため息を吐いた。

「そうだな。褒美としてクリストフには騎士爵を授ける。名誉職みたいなもんだから正確には身分が上がるわけではないが、実家が伯爵家で今回の功績に騎士爵も持っているならば――モニカの相手として不足はないんじゃないか?」
「お兄様、それって……!」

 さっきまで怒りで赤くなっていた王女の頬が、今度は違う意味で赤く染まる。

“微笑ましいわ”

 好きな人がいるならばその人と結ばれるべきなのだ。
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